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ReTERA03-4 不在の動機

上位組の初期レベルが30を超えてる中に、冗談でなく1レベルの主人公を放り込んでいる。
とまあゲーム的な表現だが。
この差を大きいと取るか小さいと取るかは、あなた次第。





「あの、エステルさん!」
 いきなり無駄に大きな声を出してしまった。が、エステルさんは笑顔を返してくる。
「その、言いにくいようなことなら答えないでもいいんですけど……エステルさんは、怖くないんですか?」
「何がですか」
 訊く前に答えが分かってしまった。この人はきっと戦うのを怖がってない。
「戦うのがです。僕は怖かったです……」
「ええと、そうね……」
 エステルさんは考えるように、一拍間を置いた。
「逆に教えて。尚也君は何が怖いのかを。自分が死ぬかもしれないから? 誰かを殺めてしまうかもしれないのが? それとも……戦うことそれ自体?」
「あう……それは……自分でもよく分からないです」
「そう。でも、それは君らしい、大事にしていい感覚だと思うよ」
 今のは一体どういう意味なんだ。いまいち意味が分からなくて不思議だった。
「怖いと感じるのは当たり前なんですよ。アルやエリスだって同じように感じて、それでも戦わないと守れないものや、その時があるのを知っていて戦うんですから」
「じゃあエステルさんはどうなんですか?」
 今のはエステルさんの意見だけど、自分の話はしていなかった。
「私は少し特殊と言いますか……慣らされてしまったんですよ。だから、感性が少しずれてるいるので」
「慣される?」
「数えで十二になった時が私の初陣で、それ以来ずっと大なり小なり様々ですが、何かしらの戦いに関わってきたので。私のいた国ではそれが普通でも、多くの国や――この世界でさえ普通じゃありませんでしたけど」
 エステルさんは笑顔でそう言う。だが、最後のほうは苦笑いにしか見えなかったのは、僕がそうあって欲しいと思っていたからだろうか……。
「だからでしょうね。私は怖いと感じても、それで尻込みできなくなってしまってるんです」
 何と言っていいのか、逆に分からなくなってしまった。
 この人は僕よりそれだけの場数を踏んでしまっている。
「……僕の言うことは甘いんですか?」
「言ったでしょう? その感覚は大事だって。自分にないからこそ大切だと気づくこともあるんですよ」
 いよいよ僕は言葉をなくした。


web拍手 by FC2 [ 2012/08/15 05:00 ] ReTERA | TB(-) | CM(-)