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ReTERA03-8 不在の動機

知り合いと言うべきか、友人と言ってしまってもいいのか。
その線引きはさておき、どうも知ってる人間がblogを始めたような気もするのだが確証がない。遅かれ早かれ、事実か別人かは分かるだろうけど。




「思い切りがよかったけど、どうして急いで追いつこうとしたの?」
「どうしてって……逃げられたら捕まえにくいかなと思って」
 自分で言って、あまり自信がなかった。なんとなく裏がありそうに思ってたけど、それだけだけで考えなしに動いていたのには変わりない。
 その辺に触れられるのかと思って内心では身構えていた。
 しかしエステルさんは今一度離れると、僕からゆっくり距離を取り出す。
「まあ、いいでしょう。それより、まだ始まったばかりですよ」
 追ってこないの、とでも言いたげに聞かれた。
 なんとも調子が掴めないけど、確かにまだ始まったばかりだ。
 どうすればいいかは分かってない。でも離れたままで捕まえられるものじゃないはずだ。
 今はとにかく近づいて、隙を窺うしか思いつかない。
 ……隙なんて見つけられるかも怪しいけど。
「当たり前の話ですけど、何かしら身構えておけば突発的な動きにも反応できたりするので。体よりも心の持ちようのほうが大事かもしれませんが」
 エステルさんは両手を少し前に出して掌を向けてくる。それだけなのに、不思議なほど踏み込めない気がした。どこから手を出していいのか。
「なんか……近づいたら、速攻で取り押さえられそうな気がするんですけど」
「不用意に近づいたせいで、痛い目に遭うのも珍しくないですからね。用心して、備えて、我慢しろですよ」
「耐えるのが前提じゃないですか」
 さり気なく無茶苦茶を言われた気がした。
 いきなりエステルさんの走るペースが上がった。後ろへ走り出すと、横の路地に曲がって姿が見えなくなってしまう。
 まずい。範囲が決まってるとはいえ、見失ったら厄介だ。
 駆け出し、待ち伏せを警戒しながら大回りに細い路地に入る。と、エステルさんは路地の先で立ち止まっていた。その先はもう大通りで露店が建ち並んでいるのを覚えている。
「交戦時にはいくつかの鉄則があります。どんなことがあると思います?」
「え? うーん……周りをしっかり見るとか、敵からは目を逸らさない……ですか? 実践はできてないですけど……」
 初めての戦いでの教訓だった。正解かどうかは分からないけど、今言ったことができていれば、あんな危ない目に遭わずにすんだのかもしれない。
「注意点はそれで合ってますよ。できない部分は体に覚え込ませるしかありません。これから他にも教えていくので……なるべく早く身につけてください。私だって尚也君が苦しんでる姿なんて見たくありませんから」
 最後のほうは真顔でこっちを見ていた。真剣に考えてくれてる、のか?
 今はそう思いたい。自分を見てくれている人がいるのは、こんな状況でも素直に嬉しかった。

web拍手 by FC2 [ 2012/08/27 05:00 ] ReTERA | TB(-) | CM(-)